SIにおける営業生産性向上→事業のシュリンク
某SIerの中で、「営業担当者の生産性」というのが話題に上がります。
計測している値は、
顧客への訪問件数÷日もしくは月
私は、SI営業などのソリューション営業において、「生産性が高い=顧客への訪問件数が多い」という定義が全く理解できません。
そもそも生産性とは何でしょうか。
生産性とは、
生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度のこと。あるいは資源から付加価値を生み出す際の効率の程度のこと。
※ウィキぺディアより転載
今回の営業の生産性の場合は、
受注額÷業務にかけた時間 ※
※顧客訪問、資料作成(バックヤードの人含む)、社内会議などすべての投入時間
となると、極論をすれば、顧客に訪問せず、資料も作らず、会議もせず、事務処理もせず、の状態で受注が上がることが、「最も生産性が高い」ということになります。
しかし現実には、こんな人はいません。
仮に、顧客のハートをがっちりつかんでいて、電話一本で数億円の商談を決めることができる人がいても、その先に膨大な社内外のレギュレーションに沿った処理が必ず発生するためです。
そうすると、生産性を高めるためには、投入する時間をミニマムにすることが求められます。
つまり、最低限の資料、会議、事務処理で、手戻りなく、社内のステークホオルダーや顧客との理解の齟齬がなく、社内外のルールに沿ったかたちで処理をすることが「生産性が高い」ということです。
受注額÷ミニマムな投入時間=生産性が高い。
ここでもう一つ別の概念を追加します。
新規案件 or 既存案件
営業の現場では、新規案件の方が価値がある、とされています。何故ならば、既存案件に比べ、受注後のビジネス拡大の可能性があるからです。もちろん新規ならではのリスクもありますが、新規案件を数多く獲得できた方がビジネスの伸びしろが大きいでしょう。
しかし、新規ビジネスを獲得するのは容易ではありません。新規案件を既存案件と比較した場合、
顧客とのコミュニケーションコストが高く、合意形成に時間がかかる。
技術的、営業的、経済的、社会的な裏付けに時間がかかる。
新規案件は、最初の受注額が低い場合が多い。
社内の承認を得るのに時間がかかる。
そもそも受注できるかどうかあやしい。
要するに時間がかかるわりに、当初の見返りは少ない、または「ない」わけです。
新規案件=時間がかかるわりに、見返りが少ない(もしくはない)
これを先ほどの、生産性の式と合わせて考えてみると、下記のようになります。
受注額は少ない÷投入時間は多い=生産性は低い=社内の評価が低い(給与が低い)
逆にいうと、既存案件の場合には、下記のようになります。
受注額は一定(随意契約)÷少ない投入時間=生産性は高い=社内の評価は高い(給与が高い)
社内の評価が低くても「武士は喰わねど、、、」的なマゾ的な人もいますが、生活をかかえたミドル以上にはリスキーな活動でしょう。
つまり、SIにおいて営業の生産性を求めると、
生産性の向上を促す→新規案件は少なくなる→事業がシュリンクする。
ということです。
企業経営者や営業部門の統括者がビジネスを拡大したのならば、
訪問件数、受注額などによるパフォーマンス計測はやめる。
「管理」の度合いを下げ、新規ビジネスへの闘志を認める価値観、体制の強化。
ということだと思います。
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